「授業の前は将来のことをぼんやりとし考えていなかったのですが、授業の後は将来のことをちゃんと考え、イメージすることで、何が足りないかがわかり、明確に課題がでてきた」
「なりたい自分を改めてイメージすることで、今のままの努力では実現できない。そこに気付くことができた」
「私は常にネガティブな方に考えてしまっていたけれど、この授業でどうすればポジティブに考えることができるのか知ることができたので、目標を達成するために前向きに考えて行動したいと思う」
初年次教育科目「フレッシュマンセミナー」では、後期1回目の授業で、大学2年目の初日の自分をイメージするという授業をしています。
元ネタは『前祝いの法則』という本です。それを90分の授業で展開できるようにデザインをしています。
具体的な未来をイメージすることによって、学生の意識が変化したことが、上記の感想からも分かります。
そして「フレッシュマンセミナー」は、6クラスで展開しています。
そうです、講座の設計者は私ですが、他の教員でも再現性のある結果を生み出しています。
なぜそうなったのか。3つのポイントにまとめてみました。
ワクワク気分でスタート
「羽生弓弦くん」の未来イメージ
「身口意」でバーチャル体験
1.ワクワク気分でスタート
最初にワクワクした気持ちをつくることによって、緊張をほぐし、授業への期待感を高めることが狙いです。
夏休み明けの最初の授業なので、まずは楽しい気持ちを持ってもらうことを心がけました。
具体的に何をしたかというと、始めに夏休みの楽しかったこと、良かったことなど、エピソードを3つ書いたメモをつくります。
次に立ち上がって、2~3人のグループをつくり、1人30秒くらいずつ話します。
そして新しい相手を見つけて、また話すことを2~3回繰り返します。
ワクワクメモの注意点として、
「思いついたことを順序や重要さを考えずに書く」
話すときは手短に要点だけ「私の夏休みで良かったことは、1何々、2何々、3何々」と概要を話し、あとは話したいことを一つ選んで話す。
教員は説明するだけでなく、見本となるように自分のエピソードを話すこと。ちなみに、これは「ファシリテーターファースト」という技術です。
これで、学生同士の話もスムースに進みました。
学生たちは、自分の夏休みの話をすることによって、その時のワクワク感を思い出すことに加えて、他人のワクワクした話を聞くことで、ワクワク感が増幅していくのです。
教室を俯瞰すると、全体の温度が上がってきたことが感じられました。
これだけできれば成功は間違いなしです。
2.「羽生弓弦くん」の未来イメージ
「何が起きたらワクワクする?」いう質問をスライドで見せた後に、
こんな質問をしてみました。
「フィギュアスケートの羽生弓弦くんが、ソチ・オリンピックの時に行きの飛行機で、
泣いていたそうです。その理由は?」
この問いについてグループで話した後に、答えを聞きました。
学生たちの答えは、「不安だった」「ホームシックだった」などなど。
どれもハズレです。
羽生くんが泣いていた理由は、なんと、
「イメージの中で、最高の演技をしていたから」
自分のイメージした演技に感動して泣いていたそうです。
羽生くんのエピソードから、イメージすることの大切さを学生に伝えます。
そして、もう一度質問をします。
「何が起きていたらワクワクする?」
この問いは、現在完了形であることに特徴があります。
その理由については、考えてみてください。
3.「身口意」でバーチャル体験
これは弘法大師の三密加持のアイデアを借りています。身口意(しんくい)と読みます。
「意」というのはイメージです。
未来をありありとイメージできれば、現在も未来も変わります。
自分の得たい未来がイメージできるように、問と事例の順序を工夫しています。
とくに、未来ワークシートでは、よりイメージがハッキリするように、問いを並べています。
「いま、あなたが一番ワクワクすることが起こっています。とっても素晴らしいものが手に入ったり、あなたやあなたの周りが大きく変わっています。さて、どんなことが起きていますか? 」
「いま、あなたはどんな気持ちになっていますか? 」
「あなたの姿を見て、誰がどのように喜んでいますか? 」
「喜んでくれている人は目の前にいますか?
あなたは、どこにいますか、何時頃ですか、周りには何か見えますか?」
「あなたは、そこで何をしていますか?
あなたは、どんなことを話していますか、心の中では何と言っていますか? 」
という問いに答えてもらうようにしています。しかし、この問いはまだ検討の余地ありですが…。
「口」というのは、文字や言葉で表現することです。
書き込んだ未来ワークシートを参考に、グループの仲間からそれが達成した未来についてインタビューをしてもたいます。
他人から質問されることで、むりやり未来を想像し、それを言葉にするのです。
他人の質問に答えることによって、自分自身にフィードバックがかかるので、未来イメージがより鮮明なものになるのです。
「身」というのは体の動きです。
「意」と「口」によってリアルになったイメージを、体の動きで表現することで、意識と体をつなげます。
今回は「成功ポーズ」をとって、成功したときのイメージや感情を、体感覚として味わいました。
このように、想像した未来イメージを、言葉と体を使って表現することで、達成したときの心身の感覚を先取りすることができるのです。
さて、これを宮城県で最も大変な公立高校で実践をしました。どうなったかは、また次の機会にでもお話しします。
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